これまでのお話で、
・噛み合わせは人それぞれ異なること
・歯や義歯があっても、必ずしも噛み合わせが安定しているとは限らないこと
・咬合平面の乱れが、噛みにくさや義歯の不安定さにつながること
についてお話ししてきました。
では、その噛み合わせを
どのように整理し、考えていくのか。
その際に使われる道具のひとつが、
「咬合器」です。
■ 咬合器とは何をする道具なのか
咬合器というと、
「顎の動きを再現する装置」
と思われることがあります。
しかし、プロター咬合器は、
顎運動を再現することを目的とした道具ではありません。
プロター咬合器の本来の役割は、
・口の中の情報
・噛み合わせの位置関係
・咬合平面の基準
を、模型上にできるだけ正確に再現することです。
つまり、
口の中で起きていることを、
口の外で整理して考えるための道具だと言えます。
■ なぜ高い精度が求められるのか
噛み合わせの調整は、
ほんのわずかなズレでも、
・噛みにくさ
・義歯の不安定
・痛みや違和感
につながることがあります。
そのため、プロター咬合器は、
ミクロン単位の精度で扱うことを前提に作られています。
一方で、
・扱いが難しい
・取り扱いに注意が必要
・経験と理解が求められる
という特徴もあり、
誰でも同じように使える道具ではありません。
■ 日常的に使われる道具ではありません
プロター咬合器は、
・特別な装置だから使う
・使えば必ず良い治療になる
というものではありません。
日常臨床で頻繁に使用される道具ではなく、
・理論の理解
・継続した修練
・技工士との連携
があって、はじめて意味を持つ道具です。
そのため、
必要性を慎重に見極めたうえで
選択されるべき道具だと考えています。
■ デジタル補綴との関係について
近年、
デジタル機器を用いた補綴治療は大きく進歩しています。
多くの症例では、
デジタル技術によって十分な精度が得られるようになっています。
しかし、
・咬合平面のわずかなズレ
・咬合支持の微妙なバランス
・ミクロン単位での調整が求められる症例
では、
現時点では、
プロター咬合器を用いた補綴の方が
高い精度を得られる場合もあります。
これは、
デジタルが劣っているという意味ではなく、
適材適所の問題だと考えています。
■ 人の手が生む精度
プロター咬合器を正確に扱うためには、
・咬合器の特性を理解していること
・日頃から精度を意識して作業していること
・継続的な修練を積んでいること
が欠かせません。
そのような技工士さんが製作した補綴装置は、
単に「作られたもの」ではなく、
知識と経験の積み重ねによって成立しているものだと感じます。
■ まとめ
プロター咬合器は、
・顎運動を再現するための装置ではなく
・口腔内の情報を精確に再現するための道具
です。
特別な装置だから使うのではなく、
精度が求められる症例において、
現時点で信頼できる方法のひとつとして選択されます。
ここまでで、
咬合平面 → フェイスボウトランスファ → プロター咬合器
という流れが、ひとつにつながりました。
次回以降は、
・理想的な噛み合わせとは何か
・合わせるべき噛み合わせ
・あえて合わせない噛み合わせ
といった、さらに踏み込んだ内容に進んでいく予定です。
噛み合わせは、
見た目だけでは判断できない要素が多く、
単純な話ではありません。
そのためこそ、
丁寧に考えていく必要があるのです。
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