「噛み合わせ=歯と歯が当たること」と思われがちですが、私たちはもう少し広い視点で見ています。
噛むという行為は、
脳 → 筋(咀嚼筋) → 歯列・顎関節
という連携の“結果”として起こります。
つまり、歯(見た目の歯並び)だけを整えても、必ずしも噛みやすさや快適さが改善するとは限りません。
■ 顎関節は「スタート地点」ではなく「機能が成立した結果」
噛む仕組み(機能的咬合系)がうまく成り立っているとき、
顎関節はその結果として安定した位置におさまります。
当院では、この“機能が成立した結果として得られる顎関節の安定”を
「顆頭安定位(かとうあんていい)」と捉えています。
ここで大切なのは、
顆頭安定位とは「どこが正しい位置か」を決め打ちする概念ではない、という点です。
顆頭安定位=「この位置が正解」ではなく、
顆頭安定位=「機能的咬合系が成立した結果として、顎関節が安定している状態」
という考え方です。
■ だから当院は「顎関節の位置を出発点」にして咬合位を決めません
顎関節(顆頭)を“基準点”として先に固定し、
そこから噛み合わせ(咬合位)を作る——
という進め方を、当院は原則として行っていません。
理由はシンプルで、
顎関節は「原因」ではなく「結果」として安定していることが多いからです。
先に顎関節だけを基準にしてしまうと、
その人にとって成立しているはずの
脳・筋・感覚(歯根膜など)・歯列・顎関節の連携を、かえって乱してしまうことがあります。
■ “正しい位置探し”よりも、“成立しているかの確認”が重要
当院が重視するのは、
「この顎関節位置が正しい」と言い切ることではなく、
いまの状態で機能的咬合系が成立しているかどうかを確認することです。
そのために、
・主観的な検査(患者さんの感じ方、噛みやすさ、疲れ、違和感など)
・客観的な検査(咬合接触、顎運動、筋の状態、咬合採得など)
を組み合わせて評価します。
そして必要があれば、治療の途中でも術後でも評価し直し、
“成立している状態”へ近づけていきます(=咬合管理)。
※これらを十分に行うには、保険診療の枠では時間・工程の制約が大きく、難しい場面があるのも現実です。
次回は、では「顆頭安定位」とは具体的にどんな状態なのか、
そして“安定”とは何を指すのかを、もう少し噛み砕いて説明します。
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