義歯治療を行っていると、
「入れ歯が合わない」「噛みにくい」「すぐ外れる」
といった悩みを抱えて来院される方が少なくありません。
多くの場合、原因は入れ歯そのものだけにあるわけではなく、
「噛み合わせ(咬合)」をどう考え、どう支えているかにあります。
今回紹介する書籍は、
昭和48年(1973年)に出版された『咬合を考える』という一冊です。
私が生まれる前に書かれた本ですが、
そこに書かれている内容は、今の臨床においても本質的には全く色あせていません。
現在では、口腔内スキャナーや3Dプリンターといった
デジタル技術が義歯治療にも応用されています。
しかし、どれだけ技術が進歩しても、
・咬合とは何か
・なぜ噛めると安心できるのか
・生体はどのように力を受け止めているのか
といった根本的な考え方は変わっていません。
義歯は単なる「人工の歯」ではなく、
生体に合わせて設計される精密機器だと私は考えています。
顎、筋肉、粘膜、残っている歯、
それぞれが無理なく力を受け止められるように
バランスを取ることが非常に重要です。
専門的には「生理学」が大きく関わってきます。
正直に言えば、学生時代の私は生理学が得意ではありませんでした。
難しく感じる分野でもあり、
深く理解できていたとは言えなかったと思います。
しかし臨床経験を重ねる中で、
「なぜこの入れ歯は安定するのか」
「なぜこの噛み合わせではトラブルが起こるのか」
を考えるようになり、
改めてこの本に書かれている内容の重要性を実感するようになりました。
『咬合を考える』は、
噛み合わせ治療を真剣に行うのであれば、
必ず一度は向き合うべき書籍だと思います。
入れ歯治療においても、
見た目や装着感だけでなく、
「噛んだときに安心できるかどうか」。
その土台となる考え方を、
これからも大切にしていきたいと考えています。
咬合を考える 書籍 表紙 昭和48年 噛み合わせ 義歯治療
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