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義歯と噛み合わせのその先へ 「歯を失った時、治療はどう考えるのか?」 歯を失った時、治療は1つではありません

歯を失った時、
患者さんからよく聞かれる言葉があります。

「入れ歯とインプラント、どちらが良いんですか?」

確かに、歯を失った時の代表的な治療として、

・義歯(入れ歯)
・ブリッジ
・インプラント

などがあります。

しかし実際には、
単純に「どれが一番良い治療か」を決めることはできません。

なぜなら、

・どの歯が残っているのか
・どれくらい噛めているのか
・噛み合わせは安定しているのか
・清掃は可能なのか
・将来的に維持できるのか

などによって、
適した治療は大きく変わるからです。

つまり、
歯を失った時の治療は、

「高級な治療を選ぶ」

という話ではなく、

「その人にとって、何が長期的に安定しやすいか」

を考える必要があります。

■ 「歯を入れる」と「長く使える」は同じではありません

患者さんの中には、

「しっかり固定される方が良い」
「動かない方が良い」
「自分の歯みたいになる方が良い」

と考えられる方も多くおられます。

もちろん、
それ自体は自然なことです。

ただ、実際の補綴治療では、

・固定されている
・よく噛める
・見た目が良い

ということだけで、
長期的に安定するとは限りません。

例えば、

・清掃が難しくなる
・強い力が集中する
・残っている歯に負担がかかる
・将来的な修理が難しくなる

など、
別の問題が起こることもあります。

そのため、
補綴治療では、

「今どう見えるか」

だけではなく、

「5年後、10年後にどうなっているか」

を考えることが非常に大切です。

■ 治療方法は、患者さんごとに変わります

また、実際の治療では、
単純に「どの治療法が優れているか」だけで決まるわけではありません。

例えば、

・年齢
・残っている歯の状態
・噛み合わせ
・全身状態
・清掃のしやすさ
・通院状況
・ご予算

などによって、
選択肢は大きく変わります。

同じ“歯を失った状態”に見えても、

ある方にはインプラントが適していて、
別の方には義歯の方が長期的に安定することもあります。

つまり、

「正解の治療法」が最初から決まっているわけではありません。

当院では、
治療方法を一方的に決めるのではなく、

・何を優先したいのか
・どこまで治療を希望されるのか
・将来をどう考えるのか

を患者さんと一緒に整理しながら、
治療方法を考えていくことを大切にしています。

■ 「補わない」という選択肢もあります

また場合によっては、

「必ずしもすべての欠損を補うわけではない」

という考え方もあります。

これはSDA(Shortened Dental Arch:短縮歯列)と呼ばれる考え方で、
奥歯が一部失われていても、
残っている歯や噛み合わせの状態によっては、
必ずしも積極的に補綴治療を行わないという選択肢です。

もちろん、
すべての患者さんに推奨される考え方ではありません。

しかし実際の臨床では、

・年齢
・残存歯の状態
・噛み合わせ
・清掃性
・全身状態

などを総合的に考えた結果、

“無理に補わない方が安定する”

と判断される場合もあります。

つまり、

「歯を失った=必ず何かを入れる」

というほど単純ではないのです。

■ 治療方法よりも、「どう噛んでいるか」

以前の「咬合の基本」シリーズでもお話ししましたが、

歯があることと、
きちんと噛めていることは、
必ずしも同じではありません。

実際には、

・歯が入っていても噛めていない
・義歯が入っていても接触していない
・咬合支持が失われている

ということは少なくありません。

これは、
インプラントでも同じです。

インプラントを入れることで、
歯は補われます。

しかし、

・どこで噛んでいるのか
・力がどう流れているのか
・顎がどのように動いているのか

まで考えなければ、

「歯は入ったけれど、うまく噛めない」

ということも起こり得ます。

つまり、
治療方法そのものより、

「その噛み合わせがどう機能しているのか」

の方が、
実は重要なことも多いのです。

■ 「全部インプラント」が最善とは限りません

最近では、
インプラント治療は非常に一般的になりました。

インターネットでも、

・固定式
・よく噛める
・入れ歯にならない

といった言葉を目にすることも増えています。

もちろん、
インプラントは非常に優れた治療方法のひとつです。

私自身も、
日本口腔インプラント学会に所属し、
インプラント治療について学んできました。

また以前には、
日本口腔インプラント学会専修医を取得していた時期もありました。

しかし一方で、
実際の臨床では、

「インプラントを入れればすべて解決する」

というほど単純ではない場面も多く経験します。

例えば、

・強い噛みしめがある
・清掃が難しい
・骨の条件が厳しい
・残っている歯とのバランスが悪い

といった場合には、
治療後の維持が難しくなることもあります。

また、
場合によっては、

・義歯の方が負担を分散しやすい
・可撤式の方が清掃しやすい
・あえて固定しない方が長持ちする

という考え方が必要になることもあります。

つまり、

「固定式だから優れている」
「義歯だから劣っている」

という単純な話ではないのです。

■ 補綴治療は、「その人全体」を考える治療です

歯を失った時の治療では、

・歯だけ
・骨だけ
・インプラントだけ

を見ていても、
十分ではありません。

実際には、

・年齢
・噛む力
・清掃能力
・残存歯
・咬合
・全身状態

など、
様々な条件が関係しています。

だからこそ、
補綴治療では、

「何を入れるか」

以上に、

「どう機能させるか」
「どう維持していくか」

を考える必要があります。

■ このシリーズでお話ししたいこと

今回から始まるシリーズでは、

・インプラントとは何か
・どんな特徴があるのか
・何が向いていて、何が難しいのか
・義歯とはどう違うのか
・どうすれば長く安定するのか

について、
できるだけ分かりやすく整理していきたいと思います。

ただし、
このシリーズは、

「インプラントを勧めるための話」

ではありません。

また、

「義歯が良い」
「インプラントが悪い」

という話でもありません。

大切なのは、

「その人にとって、何が長く安定しやすいのか」

を考えることです。

歯を失った時の治療は、
ひとつではありません。

だからこそ、
単純な“正解探し”ではなく、
丁寧に考えていく必要があるのです。

次回は、

「インプラントとは、どういう治療なのか?」

について、
基本的なところから整理していきたいと思います。

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