初診予約 WEB問診 コラム ブログ

コラム

 義歯は「作ること」ではなく、「使い続けること」が大切です ~栄養と健康を支えるための義歯治療~

これまでのコラムでは、歯を失うことで噛む力が低下し、それが栄養不足やフレイル、さらには健康寿命にも影響する可能性があることをお伝えしてきました。また、歯を失ったまま放置すると、残っている歯や噛み合わせにも影響が広がり、将来の治療がより複雑になることについてもご紹介しました。

では、義歯を作れば、それだけで栄養状態や健康は改善するのでしょうか。

残念ながら、答えは「必ずしもそうではありません」。

義歯は天然歯とは異なり、お口の中に新しく入る人工の装置です。そのため、多くの患者さんは装着した直後に違和感を覚えます。「思っていたより大きい」「話しにくい」「噛みにくい」「異物感がある」と感じることは決して珍しいことではありません。

これは義歯が合っていないというよりも、新しい環境にお口が適応していく過程で起こる自然な反応です。新しい靴を履いたときに最初は違和感があっても、少しずつ足になじんでいくように、お口の筋肉や舌も少しずつ義歯に慣れていきます。

その中でも患者さんが気にされることの多いものが発音です。

実は義歯は、「発音を良くする治療」というよりも、発音に影響を与えることの多い治療でもあります。特に上あごを覆う義歯では、舌が触れる位置が変わるため、サ行やタ行、ラ行などが話しにくくなることがあります。

もちろん、多くの場合は時間の経過とともに慣れていきます。しかし、義歯の設計によっては発音への影響を少なくできる場合もあります。

当院では、お口の状態に応じて、口蓋(上あご)をできるだけ覆わない設計が可能なミラクルデンチャーや、インプラントを利用して義歯を安定させるインプラント義歯(インプラントオーバーデンチャー)にも対応しています。

これらはすべての患者さんに適応できるわけではありません。残っている歯の状態や顎の骨の状態、噛み合わせ、将来的な変化まで十分に検査・診断したうえで、その方にとって最適な治療方法をご提案しています。

また、義歯治療は「作って終わり」の治療ではありません。

実際に毎日の生活で使っていただきながら、痛みはないか、しっかり噛めるか、外れやすくないか、食事はしやすいかなどを確認し、必要に応じて調整を重ねていきます。こうした調整を繰り返すことで、その方のお口により適した義歯へと仕上がっていきます。

さらに、お口の中は年齢とともに少しずつ変化します。顎の骨は徐々に吸収し、歯ぐきの形も変わります。残っている歯の状態が変化することもあります。そのため、一度完成した義歯でも、定期的な点検や調整を続けることが長く快適に使うためには欠かせません。

患者さんは「今、噛めればいい」と考えられることが多いかもしれません。しかし私たち歯科医師は、5年後、10年後も快適に食事ができ、残っている歯を守りながら生活できることを目標に治療を考えています。

そのためには、現在のお口の状態だけでなく、将来どのような変化が起こる可能性があるのかまで見据えた検査・診断が重要になります。患者さんによっては、早めの治療が望ましい場合もあれば、一定期間経過を観察した方がよい場合もあります。その判断は、お口全体の状態と将来予測を踏まえて行う必要があります。

義歯治療の本当の目的は、「義歯を作ること」ではありません。

毎日の食事を楽しみ、必要な栄養をしっかり摂り、それを長く維持することです。

食事を楽しめることは、栄養状態の改善につながります。十分な栄養は筋力の維持やフレイル予防にもつながり、健康寿命を延ばすための大切な要素になります。

だからこそ当院では、「どの義歯を作るか」ではなく、「患者さんがこれからどのような生活を送りたいのか」を大切にしています。

検査・診断を丁寧に行い、お口の状態だけでなく生活背景やご希望も踏まえながら、一人ひとりに適した治療方法をご提案すること。それが私たちの考える義歯治療です。

義歯は失った歯を補うためだけの装置ではありません。

毎日の食事を支え、栄養を支え、そして健康寿命を支えるための大切な医療であると、私たちは考えています。

ページ上部へ戻る
0742-30-6315