「最近、少し噛みにくくなった。」
「以前より硬いものを食べなくなった。」
「入れ歯が少し合わなくなった気がする。」
このような変化を、「年齢のせいだから仕方がない」と思っていませんか?
実は、このような小さな変化がお口の衰えの始まりであることがあります。
近年、この状態は「オーラルフレイル(口腔機能の衰え)」と呼ばれ、健康寿命との深い関係が注目されています。
今回は、「少し噛みにくい」が将来どのような影響を与えるのか、そして当院がなぜ診査・診断を大切にしているのかをご紹介します。
■ オーラルフレイルとは?
フレイルとは、「健康」と「要介護」の間にある状態をいいます。
その中でも、お口の機能が少しずつ低下していく状態がオーラルフレイルです。
例えば、
・食べこぼしが増えた
・むせることが増えた
・硬いものを避けるようになった
・滑舌が悪くなった
・入れ歯が合わなくなった
・食事に時間がかかるようになった
このような変化は、お口からの大切なサインです。
■ 「少し噛みにくい」が危険な理由
「まだ食べられるから大丈夫。」
そう思っている間にも、お口の機能は少しずつ低下していることがあります。
噛みにくくなると、自然と柔らかい食事が増え、肉や野菜を避けるようになります。
すると、たんぱく質やビタミンが不足し、筋肉量や骨量の低下につながることがあります。
つまり、「噛めないこと」は、お口だけの問題ではなく、全身の健康にも影響するのです。
■ 歯を失ったら、すぐ治療した方がよいのでしょうか?
ここで一つ、大切なことがあります。
「歯を失ったら、すぐに入れ歯を作らなければならない。」
というわけではありません。
患者さんによっては、早めに治療した方が将来的に歯を守れる場合があります。
一方で、お口全体のバランスが安定している場合には、あえてすぐに治療を行わず、経過を観察した方がよい場合もあります。
歯科医療では、このような考え方をSDA(短縮歯列)の概念も参考にしながら判断することがあります。
つまり大切なのは、
「歯がないから治療する」のではなく、
「その患者さんにとって、今治療することが最善なのか」を診断することです。
■ 「様子を見る」ことにも診断が必要です
経過観察という言葉を聞くと、
「何もしない」
という印象を持たれるかもしれません。
しかし実際には、その逆です。
経過観察を選択するためには、将来どのような変化が起こる可能性があるのかを十分に予測する必要があります。
例えば、
・周囲の歯が倒れてこないか
・向かい合う歯が伸びてこないか
・残っている歯に負担が集中しないか
・噛み合わせが崩れないか
・食べられる食品が減らないか
・お口の機能が低下しないか
など、多くの項目を考える必要があります。
一方で、経過観察を選択することで、
・健康な歯を削らずに済む
・不要な治療を避けられる
・患者さんの生活に合わせて治療時期を選択できる
・より良い治療方法を選択できる
というメリットがあることもあります。
つまり、
「経過観察」も一つの積極的な治療方針です。
経過を見た場合のリスクとメリットを十分に比較し、患者さんと一緒に将来を考えることが欠かせません。
■ 長期間放置すると、治療は複雑になります
一方で、経過観察ではなく、単に放置してしまうことは別の問題です。
実際に当院には、
「数年前に歯が抜けたままにしていた。」
という患者さんが多く来院されます。
この場合、問題は歯が一本ないことだけではありません。
長期間経過すると、
・歯が倒れる
・向かい合う歯が伸びる
・噛み合わせが変化する
・残っている歯に負担が集中する
など、お口全体に変化が起こります。
その結果、最初は一本だけの治療で済んだかもしれないものが、残っている歯の治療や噛み合わせ全体の改善まで必要になることがあります。
つまり、欠損部だけではなく、お口全体を立て直す治療へ変わってしまうことがあるのです。
■ ブランカ歯科が診査・診断を大切にしている理由
だからこそ当院では、「今のお口」だけを診ているのではありません。
私たちが知りたいのは、
「このまま5年後、10年後にどう変化するのか」
です。
そのため、
・お口の機能
・噛み合わせ
・顎の動き
・残っている歯の状態
・歯ぐきや骨の状態
・レントゲンや口腔内写真
などを詳しく確認します。
さらに、入れ歯の製作途中にも、噛み合わせや顎の動き、入れ歯の安定性などを何度も確認しながら調整を行います。
私たちが診ているのは「今」だけではありません。
患者さんが5年後、10年後も、自分の歯と入れ歯でしっかり噛める未来です。
■ 保険診療だけでは十分に対応できないことがあります
このように、患者さんのお口全体を診査・診断し、将来を予測し、必要な検査を行い、製作途中も細かく調整を重ねる治療には、多くの時間と工程が必要です。
そのため、お口の状態によっては保険診療だけでは十分な対応が難しい場合があります。
保険診療は、多くの方が必要な治療を受けられる大切な制度です。
しかし、検査や治療方法、使用できる材料、治療工程には一定の制約があります。
特に、長期間欠損を放置した結果、お口全体の治療が必要になったケースでは、欠損部だけでなく残っている歯の治療や噛み合わせの再構成まで考える必要があり、治療は大きく複雑になります。
そのような場合には、自費診療も含め、それぞれのメリット・デメリットや費用について丁寧にご説明し、ご納得いただいた上で治療方法を一緒に考えています。
私たちがご提案したいのは、高価な治療ではありません。
患者さん一人ひとりが、これから先もできるだけ長く、ご自身のお口で食事を楽しめること。
そのために必要な診査・診断と治療をご提案しています。
■ まとめ
オーラルフレイルは、「少し噛みにくい」という小さな変化から始まります。
しかし、その背景には、お口の機能の低下や噛み合わせの変化が隠れていることがあります。
大切なのは、「早く治療すること」でも、「様子を見ること」でもありません。
一人ひとりのお口の状態や将来の変化を予測し、その方にとって最も良いタイミングと方法を選ぶことです。
ブランカ歯科では、検査・診査・診断を通して現在のお口だけでなく、5年後、10年後の未来まで見据えた治療を大切にしています。
「最近少し噛みにくくなった」と感じたときこそ、お口の未来を一緒に考える良い機会かもしれません。