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第8回 歯を抜いたあとの骨はどうなる? ― 抜歯後に起こる「骨吸収」を知っておきましょう ―

前回は、歯を抜く前にCTで骨の状態を確認することの重要性についてお話ししました。

「もう抜くことが決まっている歯なのに、なぜCTまで撮る必要があるの?」

そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、抜歯前に骨の状態を確認する理由の一つが、今回お話しする「抜歯後の骨吸収」です。

歯を抜いたあとの骨は、そのままの形で残り続けるわけではありません。

■ 歯を抜くと、骨も少しずつ変化します

歯は、顎の骨の中に埋まっています。

歯の根の周囲を取り囲んでいる骨を「歯槽骨(しそうこつ)」といいます。

歯が存在している間、この骨は歯を支えるという役割を持っています。

ところが歯を抜くと、歯を支える必要がなくなります。

抜歯した穴には血液がたまり、やがて新しい組織や骨がつくられて治癒していきます。

ここで大切なのは、

「抜歯した穴が治ること」と「抜歯前と同じ形の骨に戻ること」は同じではない

ということです。

傷口はきれいに治っていても、内部では骨の形が変化していることがあります。

■ 抜歯後の骨は「高さ」だけでなく「幅」も減っていきます

抜歯後の骨の変化は、単純に穴が埋まって終わりではありません。

時間の経過とともに、

・骨の幅が狭くなる
・骨の高さが低くなる
・歯ぐきの形も変化する

といったことが起こります。

これを「抜歯後の骨吸収」と呼びます。

特に変化が大きいのが、抜歯後の比較的早い時期です。

抜歯後数か月の間に骨の形は大きく変化し、その後も緩やかに変化していきます。

また、一般的に高さの減少以上に、頬側から舌側にかけての骨の「幅」が減少しやすいことも知られています。

■ なぜ骨が減る量には個人差があるのでしょうか?

抜歯後の骨吸収は、すべての方に同じように起こるわけではありません。

もともとの骨の厚みや形だけでなく、

・歯周病によって骨がどの程度失われているか
・歯の根の周囲に大きな感染がないか
・歯の周囲の骨壁が残っているか
・抜歯時に骨をどの程度温存できるか

などによって、その後の骨の状態は大きく変わります。

たとえば、歯周病が進行して歯の周囲の骨がすでに大きく失われている歯では、抜歯する前から骨の条件が悪くなっていることがあります。

逆に、周囲の骨が比較的しっかり残っている状態で抜歯できれば、その後の治療計画も立てやすくなります。

だからこそ前回お話ししたように、抜歯する前の段階でCTを撮影し、骨の状態を立体的に確認することに意味があるのです。

■ 骨が減ると、何が問題なのでしょうか?

「歯を抜いた場所なのだから、骨が少しくらい減っても問題ないのでは?」

と思われるかもしれません。

しかし、その後にどのような治療を行うかによって、骨の量や形は非常に重要になります。

【インプラントの場合】

インプラントは顎の骨に埋め込んで使用します。

そのため、適切な位置にインプラントを埋入するためには、十分な骨の高さだけでなく、幅も必要です。

骨が大きく吸収してしまうと、

「インプラントを入れたい位置に十分な骨がない」

という状況になることがあります。

その場合、インプラント治療の前、あるいは同時に「骨を増やす処置(骨造成)」が必要になることがあります。

【義歯の場合】

骨の状態が重要なのは、インプラントだけではありません。

義歯は、残っている歯だけでなく、歯ぐきやその下にある顎の骨にも支えられています。

骨が大きく痩せてしまうと、

・義歯が安定しにくい
・動きやすくなる
・痛みが出やすくなる
・噛む力を受け止めにくくなる

など、義歯治療にも影響することがあります。

特に多くの歯を失った場合や総入れ歯では、顎の骨の形そのものが義歯の安定性に大きく関係します。

■ 「抜いてから考える」では遅いことがあります

ここが今回、最もお伝えしたいところです。

歯を抜いたあとに、

「インプラントにしようかな」

「やっぱり義歯にしようかな」

と考えること自体はもちろん可能です。

しかし、その時にはすでに骨の吸収が進んでいることがあります。

つまり、

「抜歯後の治療を、抜歯後に初めて考えるのではなく、抜歯する前から考えておく。」

これが非常に重要です。

将来インプラントを選択する可能性があるのか。

義歯になる可能性があるのか。

ブリッジを考えるのか。

まだ決めていなくても構いません。

むしろ、まだ決めていないからこそ、将来どの治療を選んでも困らないように、できるだけ良い条件を残しておくという考え方があります。

■ 抜歯は「終わり」ではなく、次の治療のスタートです

悪くなった歯を抜くことだけを考えると、「どうやって抜くか」が中心になります。

しかし、その後の治療まで考えると、「抜いたあとに何を残せるか」という視点も大切になります。

私たちは、抜歯そのものだけではなく、その患者さんが数か月後、数年後にどのような治療を受ける可能性があるのかまで考えて治療計画を立てることが重要だと考えています。

そのために、抜歯前のCTで現在の骨の状態を確認し、必要に応じて抜歯後の骨をできるだけ守る方法を検討します。

■ では、抜歯後の骨をできるだけ残す方法はあるのでしょうか?

抜歯後の骨吸収を完全になくすことはできません。

しかし、抜歯する際に骨をできるだけ傷つけないようにしたり、抜歯した部分に適切な処置を行ったりすることで、骨の減少をできるだけ抑えることを目的とした治療があります。

その代表的な方法が、

「ソケットプリザベーション」

です。

これは、抜歯した部分(抜歯窩=ソケット)に材料などを使用して、将来の治療に必要な骨の形や量をできるだけ維持することを目的とする処置です。

ただし、すべての抜歯でソケットプリザベーションが必要というわけではありません。

骨の状態、抜歯する歯の場所、感染の程度、そしてその後に予定している治療によって、必要性は異なります。

「誰にでも行う処置」ではなく、「将来を考えて必要な方に検討する処置」と考えています。

次回は、

第9回
「ソケットプリザベーションとは? ― 抜歯後の骨をできるだけ守るために ―」

について、もう少し詳しくお話しします。

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